徒然草

つれづれにさまざま書いています。

「骨灰」  冲方丁 著

 

  骨灰(こっぱい) 冲方丁(うぶかたとう)著

      2022年12月09日 初版発行
      2023年06月30日 再販発行
     株式会社KADOKAWA


大手デベロッパーのIR部で働くサラリーマンの「松永光弘」。
渋谷駅の再開発事業に社運を賭けるシマオカ・グループの本社シマオカ株式会社の財務企画局IR部が彼の働く部署である。
いま、東棟とされる47階建ての高層ビルの建築が始まろうとしていた。

その地下空間で異様な事が起きている・・と、ツイッターで表示されたのだ。
「いるだけで病気になる」「「喉が痛い」「火が出た。息ができない」「人骨が出たのに誰も言わない」・・等々である。
会社は「ツイッターの内容に添付された画像が、この現場のものなのか?を確かめてこい」・・これが光弘に言い渡されたことである。

 

地下に下りる階段は百数十段。途方もないそれを降りていくうちに、空気は乾燥し 地下空間なのに異常に暑い。
それでもやっと階段を下りた彼は、暑さと異常なまでの臭いと乾燥に悩まされながらも、周りを見渡すと、図面に描かれていない巨大な空間の中の、真四角の穴を見つける。
周囲には祭祀場らしきものがあり、その暗い穴の中を覗き見た光弘は驚愕する。
なんとそこには、鎖でがんじがらめに縛られた一人の男がいたのである。

彼はびっくりして そばに立てかけられていた脚立を降し、パニックに陥りながらもその男を助け出そうとする。
男はいくらか認知気味だろうか、それでも光弘と共に長い階段を上がろうと必死になった。
しかし途中、骨までも灰になるような異臭に見舞われ、さらに火災も発生し、そのあげく、助け出そうとした男を見失ってしまう・・

どうにかほうほうのていで地上に出た光弘であった。


しかし、自宅に戻った彼と、彼の妻とまだ幼い娘は新たな恐怖の中にと引きずり込まれるのであった。家族を襲う信じられないような恐怖は、その入り口であった・・光弘があの穴の底から背負ってきたのか・・

 

いつも前向きな光弘、彼の横にはいつからか、死んでこの世にはいないはずの「実父」が常にいるようになる。光弘に様々な助言をし、時には彼の行動を叱り、また、孫を「見ているから」とやさしい言葉も言うのである。
そんな父を光弘は当然のように頼ることになる。しかし、妻や娘の目には見えない・・


人が骨まで灰になる強烈な臭いとか、マンションについた白い足跡とか・・
電子レンジが異臭を放ったり、扇風機が急に燃え出したり・・そんな日常が終わる日が果たして来るのだろうか・・
更に、驚愕の事実、あの鎖でつながれていた男は 東棟とされる47階建ての高層ビルの地下深くの、「人柱」だと・・・

 

 

 

    


3日ほどで読み終えました。
ホラー・・といっていい本です。ホラー物は私は好きではないのですが、書店で手に取った時は、まさか、こんなにもおどろおどろしい内容とは知らず。
ただ、冲方丁氏の作品だったので買ったわけです。

東京の渋谷界隈の再開発の、巨大ビルの建て替えの地下深くで起こっている「何か」。
その「何か」が 恐ろしい事になっていく、いわば、現実問題としてあるのではないか・・?と思わせる内容でした。
「人柱」・・という言葉は昔のことではないか、と、思いますが・・
巨大な地下空間を持っている東京では 「何か」が起こっているのだろうか‥そして、いまも、「人柱」は人知れず行なわれているのか・・とも。

 

深い地下に掘られた四角い穴から出た「何か」は いつか収まるのか・・

光弘一家に襲い掛かる「何か」はいったい「何」なのか・・

巨大ビルの建て替えは どうなるのか・・

ぞ・・・っとしました・・