昭和48年3月27日 発行
平成15年12月 86冊
東京 蒲田駅の操車場で 男の扼殺死体が見つかる。
身元を隠すためか、顔の判別もつかない。
国電蒲田駅近くの横丁にトリスバーがある。
夜11時過ぎ もうほとんどが戸を閉めた時刻である。
その場末のバーのドアを開けて入って来た客がいた。
二人連れである。
1人はだいぶくたびれた紺の背広を着ていた、もう一人は淡いグレイのスポーツシャツ姿。
白髪交じりの男と、若い30歳くらいの男である。
話があるので・・と女給を遠ざけた。
「カメダは今も相変わらずでしょうね」
という声を女給は聞いた・・
蒲田駅での扼殺死体は 年齢54~5歳くらい。
死因は扼殺である。
操車場の石で滅多打ちをしたらしい。
捜査員が散らばり やがてトリスバーに辿りつく。
そこでの聞き込みで、
「東北弁を話していた」事と「カメダ」という言葉が分かってきた。
その「カメダ」は 人の名前ではないか?、捜査本部はそう思った。
人の名前・・東京でのカメダ性は何人いるのか・・
途方もない捜査が始まった。
刑事の今西栄太郎も「カメダ」に振り回されている一人である。
45歳のベテラン刑事の彼は困難な捜査のさ中にいた。
疲れているような今西を妻が心配をする。
そんな日、彼は「全国名勝温泉図鑑」を見ていて、「羽後亀田」を見つけた。
カメダは人名ではなく土地の名前か?彼はとっさにそう思った。
今西は若い刑事吉村と共に、亀田に向かう・・
そこの駅で出会ったのは「ヌーボーグループ」の一団だった・・
清張といえば「砂の器」という方もいるでしょう。
とてつもない名作です。
何回か読み、またこの度読み返してみました。
何度読んでもすばらしい作品であることが、私でさえ分かるような気がします。
ベテラン刑事の今西と若い吉村とのコンビが 「カメダ」から割り出す顛末。
また、若い女性が列車の窓から切り刻んだ小さな紙(血染めの布とあとで分かる)を蒔いていたこと、
そして、東京の片隅で転居を繰り返す女・・殺された女・・
見え隠れする男の存在・・
更に、身元が全く分からなかった蒲田駅操車場で殺された男性の身元が分かり、
彼はずっと片田舎の駐在所で働いていたこと、
当時 行き倒れた親子を救ったこと・・父親は療養所へ。しかし男の子はいつの間にか姿が消えていた。
いま、売出し中の人気作曲家の暗い過去・・
等など、線が繋がっていく様は 読んでいて、先へと促しますね。
映画も見ました。
1974年松竹株式会社 橋本プロダクション
後にリメイクされましたが、私的にはこちらがお勧めです。
人気作曲家の「和賀英良」が「宿命」という曲をバックに、病の父親と幼い彼が 放浪の旅をして日本海の荒波の海辺をずっと・・歩いていく・・その姿に いま見ても涙が止まりません。
「宿命」というピアノ曲がとてもすばらしい味を出しています。
「砂の器」のように・・・何もかもがこぼれ落ちていく・・
よく、映像になると、本よりも落ちるといいますが、この作品はそんな気がしません。
この映画も最高の名作品です。