砂漠の駅・牛尾刑事事件簿
森村誠一 2009年10月18日 第一刷発行
突然会社が倒産し、職を失った蒔田。彼の家庭はもうとっくに破綻していた。
子どもはいないし、妻は勤めていて、男の影が見え隠れする。
妻と離婚を、と思う蒔田だが、意地になってこちらから切り出すのを止めている。
彼の息抜きの場所は、「止まり木」という、きれいなママのやっている飲み屋である。
常連客はいずれもママに惚れているようなそんな中年男たちである。
道行有美子は大金を持って東京に出た父を探して新宿に来た。
一緒に行く・・と言う娘に父は笑って断った。
そんな父は数日して行方不明になった。
新宿署の牛尾刑事は偶然にその二人とかかわりあいを持つことになる。
「止まり木」のママが殺されるという事件が起き、
そのママの事件に隠れるように一人のホームレスがひき逃げ事件で死んだ。
その捜査に臨んだ牛尾は、複雑に絡み、また、偶然が折り重なった
難解な事件に足を踏み入れるのである。
道行有美子の父親を殺した1人の男が捕まる。
しかし男は、不思議な事を言い出した。
「尿意を催しトイレに駆け込んだ。トイレから出てきて車を出し死体を始末しようとしたら、殺害したはずの道行さんではなく、女の死体が乗っかってた」
「女の死体」は供述により見つかったが、それは止まり木のママであった。
男がトイレにいた、たった数分のうちに、死体が入れ替わった!
そんな事が果たしてあり得るのか。
男は、盗んだ車で死体を始末しようとし、トイレから出てきた時、疑いも無く、自分が乗ってきた車だと思った・・と言う。
では、偶然そこに、同じ車種、同じ色の車が、ある時間二台存在していたことになるのか?
牛尾達捜査員はまだ発見されていない、道行の行方を追っていく。
父を殺害された道行有美子と 止まり木のママの死で知り合った蒔田。
偶然が偶然を呼んだ、あり得ないような殺人。
父はどこにいるのか。蒔田と共に父の行方を待つ有美子。
公園のトイレですれ違った車の謎、そして、大きな事件となったことで、忘れ去られたかのような、ホームレスの死。
それらが、幾筋にも絡み合った謎を、牛尾刑事は解くことができるのだろうか・・
ずいぶん前の書籍ですが、牛尾刑事が好きで再び読んでみました。
最近のテレビでの牛尾刑事は、片岡鶴太郎さん。
すっかり「もーさん」が板について、とてもお似合いです。
牛尾刑事の寡黙でありながら、人情にとても厚く、思いやりの心を持っている姿は、
鶴ちゃんに合っていますね。
本を読んでいて、登場する刑事たちの顔を、つい、ドラマの中の彼らと重ねあわせてしまいます。
絡み合った数奇な謎が解き明かされた時、唖然・・とします。