西鹿児島駅殺人事件
西村京太郎・著 講談社文庫
2020年2月14日 第一刷発行
(2010年10月 光文社文庫)
降り注ぐ火山灰に台風接近、元服役囚までもが!
南の終着駅で事件発生。
東京警視庁の捜査一課十津川班には 十津川をはじめ、亀井刑事ほか、数人の刑事がいる。その中の田中刑事は35歳、身長180センチを超し逞しい体躯を持っている。しかし、いままで独自でのおお手柄を立てた事はない。地味な正確ではあるが、皆に信頼され、きちんと仕事をこなす・・という男である。
国鉄西鹿児島駅では、8月の帰省ラッシュを控え、駅長はじめ、皆がラッシュに備えなければならない。そんな中、今年は、あの桜島の噴火という厄介な問題を抱えていた。
降灰対策である。
更に台風11号が発生し、その台風が沖合に控えていた。台風の風向きによっては、西鹿児島駅方面に桜島の灰が降り注ぎ、厄介な問題が発生するのである。
降灰が激しくなると、列車事故が多発する恐れが生じる。なんとか、降灰がこちらに来なければ・・という思いをだれもが持っている。
更に・・である。
殺人犯 小西晋吉が出所したのである。
彼は、生まれつきの粗暴さと怠け癖、仕事も何をやっても中途半端。8年前、駅表で、タクシーの運転手と、喧嘩になった。
たまたま目撃した駅の山本助役と、公安官と運転手で彼を組み伏せ、逮捕に至った。それがよほど屈辱だったのか、その後釈放された小西は、ナイフを買い、そのタクシーの運転手を刺殺したのである。そして小西は山本助役と、常田公安官をも殺すと、うそぶいた。
その小西晋吉が刑期を終え出所したのである。
当然西鹿児島警察署では、小西出所に危惧を覚えた。この帰省ラッシュのさ中、山本助役と常田公安官を殺しに来るかもしれなかったからである・・
田中刑事は、休暇を貰い、妻のユミと三歳の息子を連れて、郷里の枕崎に帰ることにして列車に乗った。西鹿児島行きの「明星51号」である。
不思議なことがあった。
列車の中で唐突に「これを読んで・・」と渡された封筒。開けてみると「あなたを愛しています」と、ただそれだけが書かれていた。見も知らぬ女性である。彼は「ひと間違い」だと思い、ポケットにしまった。
悪いことに桜島の噴火が始まり、その灰が西鹿児島方面に降り注い始めた。駅はてんやわんやとなる。列車の遅延だけならいいが、踏切の信号機の故障など、降灰による、大きな事故が起きかねないのである。
更に・・列車内で、男が刺殺体で発見!
その男のポケットには、「あなたを愛しています」の手紙が入っていた・・田中刑事は、協力体制を取り、自分も同じ手紙を受け取ったことを告げ、渡されたその女性の事も告げた。
そしてその後、田中刑事は、後(うしろ)から何者かに刺され、還らぬ人となってしまった・・・
東京警視庁、十津川警部と亀井刑事は、西鹿児駅に急行することにしたが、台風11号と桜島の降灰によって 列車が止まってしまう。大切な部下を殺され、悲しみの十津川警部は、はたして犯人検挙ができるのであろうか・・
桜島の噴火による降灰は、その風向きによって、甚大な被害が起きるそうです。
火山の無い茨城県では、想像だにできません。
しかも、巨大台風11号の接近、更に復讐を誓っている殺人犯の事。
さまざまな要因が重なり合って、西鹿児島駅では、大変な試練を迎えた事になります。
なかなか到着できないいらだちを抱えた十津川と亀井。台風と降灰の降り注ぐ中、どうやって犯人を追いつめるのか・・
今回の本は 2010年に発売されていたものです。
新しく買ってみて、呼んだ事に気がつきましたが、
忘れていたこともあって、十分楽しめました。
主役は、西鹿児島駅の面々でしょう。
いつもは十津川班が全面的に表に出ていますが、この本では、駅のてんやわんやの事、西鹿児島署の刑事たちの、灰をかぶって真っ黒になりながらの捜査・・等、彼らの方が前面に出ています。
自然との戦いです。
かなり、はらはらものですね。