西村京太郎 著 角川文庫
令和元年5月 初版発行
(2006年9月 文春文庫より刊行)
京都鴨川べりにある和風旅館の離れの部屋で、中年女性が殺された。京都鴨川べりにある和風旅館の離れの部屋で、中年女性が殺された。42歳、東京世田谷の住所となっていた。この旅館は、7つの部屋しかなく、全室離れになっていて、このことが客を喜ばせている。この女性の部屋に入った京都府警捜査一課の中川警部は、奇妙な文字を見つけた。ふすまに大きく墨で「陰陽」と書きつけられていた。
捜査一課では、この文字が何を示すものか、分からない。殺された女性が書いたものではない、犯人が書いた文字かもしれない。東京の女性という事で、中川警部は東京の警視庁に被害者の事を調べてくれるように申し入れた。
どうも「陰陽」という文字が気にかかる。捜査員は、平安時代の安倍清明の「陰陽」ではないか?との意見も出た。
7月に入ったある日、今度は東京都内で殺人事件が発生。殺されたのは、京都で殺された坂井京子と一緒に遊んでいた一人、石川一也である。駆け付けた十津川警部が見たものは、寝室の真っ白な壁一面に「陰陽」と書かれた墨の文字であった。京都の事件と同じではないか、と思われた。
その部屋で目についたもの、それは壁にかかった大きな写真である。4人の男女が写っていた。一枚は、アメリカのラスベガスで撮ったもの。そこに、殺された二人の男女と、あと2人、計4人が写っていた。もう一枚には、紅い鳥居の前で並んで4人で撮ったもの。「鎌倉八幡」ではないか・・そして、「鎌倉八幡宮での流鏑馬の神事」が浮かび上がった・・
更に、捜査を進めていくと、この4人がいかに悪辣なやり方で 人間をだましてきたか・・が分かってきた。どの人も、数千万円という金額を、ゲームという形でだまし取られていたことが明らかになってくる。そのゲームはかなり手ひどいものであった・・・
鎌倉八幡宮、流鏑馬の神事で、映画俳優の永谷礼一郎が 第三番目の矢を失敗し、その後、アメリカで自殺とみられる事故死を遂げていたことも分かってくる。その礼一郎も彼ら4人の毒牙にかかったと見られた。彼の「死」がきっかけとなり、十津川警部たち、捜査一課の面々は、その4人の犯した「賭け」なるものを追い続けていく・・
西村京太郎氏の推理小説の中で、やはり、十津川警部シリーズが私は好きです。テレビでも、俳優さんは違ってきていても、年に数回放映されていますし、西村さんの本は読みやすくて、手元にあると嬉しいものです。
今回は、「流鏑馬の神事」に的を得て捜査が進んでいきます。紆余曲折の中、十津川たちは、事故死(自殺?)をした永谷礼一郎の息子に目を向けますが、彼には確固たるアリバイがあることが分かります。
果たして十津川班は、真犯人を見つけられるのか?
最後まで、はらはらする展開を見せている、今回の作品です。