徒然草

つれづれにさまざま書いています。

北の桜守・・


イメージ 1




北の桜守

    岸辺一徳 佐藤浩一 阿部寛・・

  監督・滝田洋二郎おくりびと

  主題歌・「花・闌(たけなわ)の時」 小椋佳









あなたのことが分からなかった この旅に出るまでは・・




1945年 南樺太に住む江蓮(えづれ)家の庭に、待望の桜の花が開いた。
夫と息子二人と暮らすてつが 本土から持ってきた桜の種が花を咲かせたのであった。
彼らにとって希望の花・・の筈であった。

その年の8月、突然ソ連軍が攻めてきた。
父は戦争に参加し、母の事を長男に託し、親子三人は命からがら南樺太から脱出し、
北海道、網走へと苦難の道を行く・・

網走は満身創痍の親子にとって、想像を絶するほどの過酷な地であったし、
生活もそれは大変で 厳しい寒さと、飢餓、また、辛辣ないじめにも合った・・

時が流れて、1971年、アメリカで成功し、企業の社長として帰国した次男の修二郎は
15年ぶりに網走の母を訪ね、呆然とする。
家は荒れ果て、歳を取った母がポツン・・といた・・
母は食堂を営んでいたが、今では日々の暮らしもやっと・・
「私は幸せになってはいけない人間なの・・」 母はぽつんと言った・・
北の大地で細々と生きている母を修二郎は唖然・・と見、母と共に暮らす決心をする。

都会の中、母てつの「老い」が、徐々に分かってくるとき、
修二郎はまた、深い悲しみと、呆然とする自分に気づく。

てつはそんな中、修二郎に迷惑をかけてはいけない・・と、一人、網走に帰ろうとする。、
そのてつの心の中には、南樺太で別れた夫の姿がある・・

母に寄り添い、北への旅を共にしようと決心する修二郎。
その旅のさ中に、母と暮らした幼いころの事を思い出したり、
いじめられた記憶もあったり、ヤミ米を運ぶ途中の過酷さを思い出したりもした。
懸命に生きた親子の記憶である・・
母は・・・いつもいつも、自分を護ってくれていた・・と、涙が出そうだった・・

やがて・・突然、修二郎の前から姿を消した、母てつ。
大雪の中 もう生きてはいまい・・誰しもがてつを思う・・

イメージ 2


懸命に戦中、戦後を生き抜いた母と子。その記憶は苦難を共にした懐かしく暖かい
人との出会いや、苦難の中、親子で励まし合ったあの日の事・・
寒さと戦いながらも懸命に生きてきたあの日の事・・


見ていてふと・・気が付きました。
南樺太で父と別れる時、父は長男に言い聞かせました。
「お前が母さんを護るんだ」と。
その、長男の姿は全く出てきません。不安に思いました。
母てつの心の中に忘れようとしても忘れられない、最も辛い記憶があった・・
それが解き明かされた時、涙が出ました・・

「桜守」・・南樺太で種から成長した桜は 母の世話のおかげで、かわいい花をつけました。
その花の元で、約束を交わした・・・遠い昔。
時間が去って行き、満開の桜が咲いています。
北海道の北の果てでは、染井吉野は育たないと聞きます。
ピンク色の桜でした。「蝦夷山桜」・・・かもしれません。
桜の花を忘れることが無かった、母てつ。
その桜を見た時、またまた涙が出ました・・

とてもきれいな映像でした。たった一本の桜の下で交わした約束。
そのかわいらしい花びらを忘れることのなかった母てつの姿が
今も心の中にあります。

早春のこの時期に観たい映画かもしれません・・・(#^.^#)



イメージ 3