「陽光桜」(DVD)
監督・原作:高橋弦
「陽光桜 非戦の誓いを桜に託した知られざる偉人の物語」
「終戦から70年、奇跡の桜に秘められた深い悲しみの物語」
知られざる偉人・高岡正明の物語。
愛媛県の山間部にある高岡家。家業は造園業、しかし当主の高岡正明は長男の正堂にその仕事をまかせっきりで、毎日、趣味の桜造りに精を出している。
母もいつもニコニコとして夫を見守るばかり、。
そんな時、見合い話が持ち上がり、正堂は見合い相手の恵子と結婚。その恵子も舅や姑を暖かく見ている。
父親の桜造りにかかる費用もばかにならず、ある日、父を問い詰める。
今まで何も語らず、ただ黙々と桜にかけてきた父正明だったが、重い口を開いた。
戦争中、正明は 地元の「青年学校農業科教員」だった彼は、敗戦の色が濃くなってきた当時、戦地に赴く教え子たちに、こう言って彼らを送り出した。
「死ぬんじゃない。生きて帰れ。日本は神の国、絶対に負けない。生きて帰ってこい」・・と。
そして、一本の桜の元で。記念写真を撮った・・
しかし・・日本は戦争に負け、送り出したたくさんの教え子たちは、遠いシベリアやジャワなどで死んで、帰っては来なかった。
みな、若い命を戦で落としていた・・
「桜の元に、帰って来れませんでした・・」かろうじて帰ってきた教え子がこう告げ涙を落とした・・
正明には後悔と自責の念があるばかりであった。
亜熱帯のジャワや過酷なシベリアでも長く咲く新種の桜を作る! 彼はそう決心したのだ。涙を抑えきれない父に、びっくりした正堂。父親の、悲しい苦しい気持ちを始めて知り、正堂も涙を落とした・・
それからは、父の好きなようにさせる。
戦争で命を落とした教え子たちや、若者たちの慰霊をしようとしていることに、今度は家族総出で、桜の新品種造りに励んでいく。
新品種造りは苦難の連続。花が咲くのを見るのは、春だけなのだ。
そして・・戦後から30年、やっと花を咲かせた桜は「陽光」として「種苗登録第一号」となっていく・・
「これでやっと、家計も助かるぞ!」そう言った正堂。しかし・・父親の桜にかける執念はそこで止まりはしなかった・・・・
※ 涙と笑いの中で 生涯を「陽光桜」に賭けた正明と家族。
いま、日本全国に、いや、海外にまでこの桜が植えられ愛でられていることを正明は知らない。いや・・きっと・・天で見守り、笑っているかもしれません。
この映画は、実話を元に制作されたものです。
陽光桜とは・・アマギヨシノ(天城吉野)とカンヒザクラ(寒緋桜)をかけあわせた桜。1981年、種苗法によって登録された。
アマギヨシノは、寒さに強く、カンヒザクラは暑さに強い。
濃いピンク色の桜で、染井吉野より一足早く咲きます。大きな花で一重。
てんぐ巣病などにも強いとされています。
この桜は、1人の男性の「散っていった生徒たちへの冥福を祈って造られた桜」なのです。
小美玉市池花池の陽光桜・・2019年春撮影・・
笹野高史さんが、寡黙でありながら桜を見てほほ笑む、とても素敵な映像を残しています。笹野さんもすてきですが、的場浩二さんの父を想う姿などにも、素晴らしいと感じました。実話を元に作られたというこの映画です。
春、陽光桜を目にしたなら、苦労して教え子たちのために造りだした悲しい現実があったことも、思い出すでしょう。皆さんにもお勧めしたい映画です。