徒然草

つれづれにさまざま書いています。

「山桜」・藤沢周平の珠玉作・・


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「山桜」
    藤沢周平・著

原作・藤沢周平「山桜」

   富司純子村井国夫・・・






風雪に耐えて咲く山桜の下、
男はひたむきに正義を貫き
女は熱い想いを胸に秘めていた・・

ご存知、藤沢周平氏の珠玉作品です。





下級武士の娘・野江は夫に先立たれて、いまは、磯村庄左エ門に嫁いでいる。
磯村との縁談のある前に 縁談の申し込みがあった、剣術の名手である、手塚弥一郎と
咲き誇る山桜の下で出会う。
剣術の名手・・となれば、気が荒く怖い・・・と思った野江は、自分の方から縁談を断っていた。
しかし、野江が思っていたのとは、まったく反対の心根の優しい男性であったことが分かる。
野江の嫁いだ先の磯村家では 野江が再婚であったためか、姑や小姑にも
つらく当たられて、必ずしも幸せではなかった。

その頃、凶作が続き 藩は危うかった。
それにもかかわらず、重臣・諏訪が私腹を肥やし、藩の不満や百姓たちの申し立てにも耳を貸さず。
それを知った手塚は諏訪を襲って殺傷した・・
しかし、お咎め切腹ではなく、長期の投獄となった・・

野江は、冷たかった婚家先の磯村を離縁し、実家に戻っていた。
手塚の母と知り合い、折に触れて訪ね、料理をしたり、桜を見たり・・と、ただひたすら、手塚の帰りを待っていた。
殿が江戸から帰り、手塚が許されるその否を、彼の母と夢見ながら・・

初めて手塚と出会った、山桜が満開の頃、手塚はその罪を許されて、故郷に戻って・・・
山桜はまるでその二人を祝うように 満開の花を咲かせていた・・



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とてもとても、優しく、穏やかな絵になっています。
野江の実家の父も母も、野江を気遣い、とても優しいのです。
ある時、桜を手に取ろうとした野江に 一枝を手折って与えた武士が、手塚でした。
思わぬ出会いをした二人でしたが、その場ではあまり口にしません。
再婚相手とは、まったくそりが合わず、悲しい毎日の中、
山桜のあの一枝と共に想いだされるのは、手塚の何とも優しげなほほえみ。
野江の 心の中が、透けて見えるような・・・そんな映画です。

いまでいえば、ハッピーエンドのお話ではありますが、
藤沢作品の「情感」「おもいやり」「一途さ」「やさしさ」・・・等々が
画面いっぱいに見え隠れしています。
画像もとても美しく、山桜の花びらが舞うシーンなど、泣けるほど・・

山桜は、花と一緒に赤い葉っぱが出ます。けなげな可憐な花と、織りなす人間模様・・
いま、春のこの時期に、改めて見たい、珠玉作品だと思います。



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