死水(しすい)
三浦明博 著 講談社 2003年7月31日・第一刷発行
早瀬は幼い娘を亡くした。
妻の里美と別れ、世間から隠れるようにサラリーマンを辞めて
「理想の川造り」に立ち上がった大地主の大道寺の元で、
車も行かないような大自然の中の山小屋暮らしを始めた。
鳥が鳴き小さな沼には、日本古来の魚たちが住む、そんな理想の地である。
世間から隔離されたような奥深い山の中の沼は、いつもと変わりがないように思えた。
しかし、早瀬はある時、一匹の巨大な魚を釣り上げてしまう。
生態系に悪影響を及ぼす、ブラックバスである。
一匹この池にいるという事は、日本古来の魚や卵は、
多くのブラックバスによって全滅させられるかもしれない。
急激にやってきた疑念。早瀬の前に次々と難関が押し寄せる。
密かに放さない限り、ブラックバスはあり得ない!
宮城県の伊豆沼での変死体。
心を寄せ、頼りにしていた大道寺の失踪、
そして、早瀬の暮らす森の大火災・・!
その火災で沼も早瀬の暮らす小屋も多くの森の木々も、
すべてを失ってしまったが
更に驚愕なことが起こった。焼け跡から変死体が出たのだ・・
あまりの事に何もかもを失った早瀬。
依然、大道寺は行方不明。
大地主の大道寺が火をつけた?そんな疑惑が頭をもたげる・・
早瀬に出来ることは何か。
森も沼も大火で失った・・自分は生きていけるのか・・
大道寺の行方も分からない・・失望、絶望の中・・
早瀬の目の前に、意外な人物が現れる。
あっ!っと驚く、真犯人の出現・・
はたして早瀬は、大道寺は・・どうなっていくのか・・
静かな森の中、人の訪れもない、小さな沼・・
環境がその沼を変えていくことに 早瀬は強い危機感を覚えます。
いろいろなことが、二転三転して、超意外な人間が真犯人として現れます。
最後には、「どうして!?」という 疑念が生まれます。
「環境破壊」の一言では済まされないような、そんな気になります。
一度失った「聖地」は はたして取り戻されるのでしょうか・・