昭和20年8月9日、もうすぐお昼になろうとしていたその時間。
浩二は学校で勉学に励んでいた。
すさまじい閃光とともに投下された原子爆弾に浩二たちは
自分が死んだ事さえ分からなかったかもしれない・・
それから3年後、母、伸子は長崎で助産婦として働いていた。
懸命に働いていたが、一瞬にして亡くした息子のことは、いつも忘れてはいない。
「遺骨」さえも無く、「どこかで生きている・・」とも思って。
そんな日、原爆で亡くした浩二が伸子の前にひょっこりと現れた。
「死んでいない」と思っていた伸子。
「あきらめが悪いから、出てこれなかった」と、浩二が笑う。
伸子は、泣いた・・
それから浩二が時折現れるようになる。
浩二の関心は、最愛の母にあったが、生前付き合っていた恋人、町子のこともあった。
「彼女は僕の嫁になる・・」・・死んでしまった今も、彼はかたくなにそう言った・・
しかし、伸子にとつとつと諭されて、町子の幸せを願うようになる浩二である。
「あなたはこの世の人ではないの。町子さんの幸せを考えましょう・・」と。
母にひそかに思いを寄せる男には、露骨に嫌な顔をしてしまう浩二・・・
伸子と浩二の時間は奇妙だったけれど、母を思う浩二と息子を思う母は
いまがとても幸せなようにも思えた・・
最初から泣けました。
「遺骨さえないんだから、浩二は生きている・・」
この言葉は、母ならだれでも・・と思わせます。
一瞬にして地獄絵となった原爆投下・・
哀しい事はもうたくさん・・と思わせます。
母伸子と浩二の関係は 誰にも知られないままに時が過ぎていくのです。
それは永遠に・・・とも、思わせました。
戦争は、2度とやってはいけません・・・