大森南朋・・・
第140回直木賞受賞作
狂おしき「美」の原点。
利休は 織田信長に 水に映る名月を見せた。
ゆらめく名月を見た信長は そこに「美」を見た。
そして利休は信長に仕える事になってゆく・・
やがて・・信長は本能寺でこの世からいなくなった。
信長の元に使えていた秀吉は天下を取ると同時に 利休も手元に置いた。
しかし「美」を探求し、多くの家臣までもが利休に心酔していく時、
秀吉は無理難題を利休に与える。
娘を差し出せ・・と言われた彼はそれを断り・・・娘は自害をする。
また高弟も目の前で惨殺される・・
その後、秀吉は利休に死を与え・・
雷鳴轟く嵐の早朝、彼は自ら刃をつきたてようとしていた。
そんな夫に、妻は一言、問う。
「あなた様には・・ずっと、思い人がいらっしゃったのではありませぬか・・」
その言葉に、利休は遠い記憶をよみがえらせていく・・
彼が死をも恐れずに追求したもの・・・
それは・・・「究極の、美」・・・そのものであった・・・
そして若い頃の禁断の恋・・
彼の秘められた謎に迫った名作です。
時は戦国。信長に愛され、そして、ゆくゆくは秀吉に憎悪までされた一人の茶人の生涯を描いています。
静かな時の中に、利休のなにげない「美」が、そこここに見られます。
ムクゲの一輪の花が・・・なんとも切ないです・・
すばらしい作品でした。