徒然草

つれづれにさまざま書いています。

「ゼロの焦点」・・松本清張 原作

イメージ 1

あなたは愛する人のすべてを知っていますか・・・?

おなじみ、松本清張ミステリーの傑作です。
時は日本が敗戦し アメリカ軍に支配されていた当時から、数年後・・
まだまだ混乱の時期、そして高度成長が著しかった時期のこと。

禎子は10歳上の鵜原健一とお見合い結婚します。お見合いゆえ夫のことは何一つ分からずに
やがて健一は仕事の引継ぎのために北陸金沢へと旅立ちます。
上野駅で列車を見送った禎子、それが夫健一を見た最後となったのです・・
彼女は夫健一が行方不明になった北陸へと向かいます。

冬の北陸は暗いなんともいえない風景でした。
日本海の荒波は容赦なく岸に打ち付け、真夜中の冬の雷もまた、禎子の心を不安にさせます。
そして・・・
次々と不可解な殺人事件が禎子の目の前で起こっていきます・・・

「夫健一が、私を捨てて消えるなんてありえない・・」
その一縷の望みが禎子を突き動かしていく様は見ていてドキドキします。
そして何も知らなかった禎子は、夫の過去を知る事となるのです。

この映画には外に二人の女性が出てきます。
映画の後半にこの二人がたどった暗い道のりが描かれていきます。
終戦後の日本がいかに辛く苦しい日々だったか・・
そしてその中でたくましく生きてきた人々を描いていきます。

当時の日本の様子が北陸の冬の荒れ狂った様とともに描かれて、
なんともすさまじさを感じました。
清張作品は「おどろおどろしさ」があるような気がします。
しかもそれは「人間の」です。
ていねいに描かれている作品だと思います。

お見合いで知り合った健一とのたった数日の結婚生活。
禎子の「私を捨てて消えるなんてありえない」との信念が
心に浸みました・・・

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/minorinnminorinn/20190808/20190808185131.jpg