徒然草

つれづれにさまざま書いています。

「月のうさぎ」・・のお話


近代美術館で、「安田靫彦(ゆきひこ)展・・没後30年  を見てきました。
彼はおもに、人物画を描いた方ですが、単に人物像を描くのではなく、
その人物の「内面」に迫った人物表現を目指した画家です。
特に歴史的な人物を、多く描いています。
「飛鳥の春の額田王(ぬかたのおおきみ)などが有名です・・

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彼の作品の中で胸を打たれる 一つの物語がありました。
古来の物語に感銘を受け 絵と文で巻物にした作品でした。
それが「月のうさぎ」です。

見上げる空のお月様に、なぜ、うさぎがいるのでしょうか?
うさぎが餅をついている・・・といわれていますよね。
お月様に大きなうさぎの姿が・・・なぜでしょう・・

昔々のおはなし・・天竺に うさぎ・きつね・サルがとっても仲良く暮らしていました。
いさかいなど全くなく、助け合って、日々暮らしていたのです。
「なぜ、けんかもせず暮らせるんだろう・・?」と帝釈天は空の上から見ていました。
「よし、私が行って、確かめてやろう」 帝釈天は よぼよぼで今にも死んでしまいそうな
翁に身を変えて、下界へと降り立ちました。
年老いて疲れ果てた翁を見て 三匹は翁を養ってあげようと話し合い、
獲物を捕って来ることにしました。

やがて、きつねも猿も立派な獲物を捕ってきて 翁に与えました。
翁は喜んでそれらを食べましたが、一匹のうさぎはどうしても何も捕る事が出来なかったのです。
山には狼もいる、大きな鳥も空からうさぎを狙っている・・・
恐くて怖ろしくて・・うさぎには何も捕れなかったのです。

やがて、うさぎは考えました。
そして 「私が戻ってくるまでに 薪を取って火を燃やしておいておくれでないか」
ときつねと猿に頼み、出かけていきました。
きつねや猿は「どうせ何も捕ってはこれまい」と考えていましたが、
薪を拾い 火をつけ ぼうぼう・・と燃やして待ちました。

そのとき、帰ってきたうさぎは
「私はあなたに何もあげることができません、ですから、この私を食べてください・・」
と言うやいなや、燃え盛る火の中に身を投じ 死んでしまったのです・・

翁は大変驚き、悲しみ、うさぎのこころねの優しさを考えたのです。
帝釈天に姿を戻し、火の中からうさぎを抱き寄せ、死んでしまったうさぎを
月へと連れて行き、あまねくみんなに見せるために、月の中にとどめ置かれたのです・・

そして、月の表面に黒く霞みがかっているものは、 うさぎが焼かれた時の煙なのです。
見上げた空のお月様の仲にいるうさぎは この優しいこころねのうさぎだったのです。
誰もが見上げた時に見られるように・・


なんか・・・悲しいですねえ。
むかし本で読んだ事がある物語、すっかり忘れていました。
帝釈天が 試すような事をしなければ・・・とも、思いますが、
試したために、うさぎの優しい気持ちも分かり、お月様に置かれて、みんなに見てもらえる・・・
どっちがうさぎにとって幸せだったんでしょうか・・・
なぜか涙が出ちゃいますねえ・・・悲しいです。

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